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2011年12月13日 (火)

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先週、ちょっと触れた、東北の漁師さんが書かれた本です。

リアスの海辺から 畠山重篤著

畠山さんという方は、気仙沼湾で牡蠣の養殖をされている漁師さんですが、ある学者さんとの出会いから、豊かな漁場を作るのは、海に流れ込む川が上流の森林地帯から運んでくる鉄分であることに気が付き、漁場の内陸にある森を守る運動をされています。

この、森を守ることによって海も守るということを、ものすごく短く言うと、森の木の葉が落ちて腐葉土になり、そこで出来る「フルボ酸」という分子が土中にある鉄分と合体してそれが地下水に溶けて川になり、海に流れ込む。これが河口付近に居る植物プランクトンや海藻などにとってとても良い栄養分になるらしいのです。そしてそれらを食べに小さな魚や貝が、そしてそれを食べにもっと大きな魚が来る、、、食物連鎖というやつですね。

 実際、昔はものすごく魚介類が豊富であった東北のリアス式海岸地帯が、工業などに使うために内陸の森の木を伐採したために、魚たちがどんどん減っていったそうです。それが、畠山さんたちが始めた「森は海の恋人」運動で森に木を植え出すと、魚たちが帰って来たそうです!

とてもすばらしい発見じゃないですか?こういう事実に行き当たった過程については、同じ作者の鉄は魔法使いという本に書かれています。こちらも、とても素晴らしい本です!

 

話が逸れました。でも、こういう背景があって、この本がよく判るので、、、この本の前半では、1943年生まれの畠山さんが幼い頃に見聞きした昔のとても豊かだった東北の海の話が歳時記風に書かれています。地元では「潜り様」と呼ばれる潜水夫の過酷な仕事の話や「磯回り」と呼ばれる潮が引いた後の浜で貝や海藻を取る名人のおばあさんの話、畠山さんが北海道から稚貝を仕入れて東北で初めて帆立貝の養殖を始めたときの苦労話など、自然とともに生きる人たちのひたむきさが感じられて感動します。

 後半は、東北沿岸の特徴であるリアス式海岸のリアスの語源ともなったスペインのガリシア地方に旅したときの話です。リアスというのはスペイン語で川を意味するRIO(リオ)が語源です。つまり、ガリシアと東北に共通しているのは、小さな川がたくさん流れていて、それが海に流れ込む湾をたくさん作るので海岸線がのこぎりのような形になっていること。内陸には、すぐ森があり、近海には大陸棚があること。このように理想的な漁場になる条件をほぼ備えているんですね。

 だから、畠山さんとガリシアの漁師たちとでは、言葉が通じなくとも、すぐに気持ちは通じたようです。お互い、豊かな、時に厳しい自然とともに生きている者同士。東北とガリシアというと、東京、大阪、或いはマドリード、バルセロナといった大都会からみると辺境の土地、、、畠山さんが、海にとって森は無くてはならない存在だから「森は海の恋人」運動をやっている、と言うと、ガリシアの漁師はこう答えます。「なに、ここでは「森は海の母」という言葉があるんだ。」と、、、ガリシアの人達も、森の重要さに気付いていたのです。

 また、ここでは、日本にキリスト教を伝えたザビエルの故郷を訪ねた司馬遼太郎さんの「街道を行く」シリーズの本から、ガリシアにあるキリスト教の大聖地、サンティアゴ デ コンポステラに巡礼に行く人達がお守り代わりにしている帆立て貝の殻に注目して、信仰心の篤さに打たれたり、スペインが大航海時代に覇権を握っていた時代、無敵艦隊「アルマダ」の船を作るために森の木をたくさん伐採してしまったために、漁場の魚が減った話など、興味深い話が満載です。

 

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