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2010年10月22日 (金)

犬の力

51gs7bq6fnl__sl160_ 10月も終盤に差し掛かり、ぐんと涼しくなりました。フリースが活躍する季節ですね。実は、先週末、厨房のオーブンを掃除していて、無理な体勢を取り続けたせいで、(業務用のオーブンは奥行きがあるので、体をけっこう捻らないと一番奥まで届かないのです。)今週はずっと筋肉痛に悩まされています。体が柔らかいのが自慢だったのに、、、年齢を感じますね。

 さて、前からマークしていたのですが、読みだすと嵌っちゃいそうで怖くて(なんせ、上下巻で1000頁超の長さなので)遠ざけていた小説をついに読んでしまいました。やはり、予想通り、読み始めると止まらなくなって、多忙な日々の間隙を縫って読んでしまい、5日間で読み終わりました。最後の方は読み終わるのがもったいない感触を久々に味わいました。

 ドン・ウイズロウ著 「犬の力」

去年の「このミステリーがすごい」の海外部門第一位に選ばれて、けっこう話題になりましたよね。物語は、メキシコを主な舞台に麻薬取り締まりに執念を燃やすDEA捜査官のメキシコ系アメリカ人アート・ケラーとメキシコの一大ドラッグカルテルの頂点へと登り詰めようとするバレーラ兄弟の30年に渡る闘いを、70年代から今世紀初頭に至るメキシコ、中南米、合衆国の現代史を背景に描いています。

 まさに血で血を洗うような抗争なのですが、登場人物の内面も良く描かれているところが魅力のひとつでしょうか?無慈悲な殺人を犯す男たちも、実は、普通の感情を持った人間で、しかし、周りの状況に巻き込まれてどんどん、後戻り出来なくなって行ったり、、、

 特に80年代後半から90年代初めにかけては、ぼくも、この物語の舞台に居たこともあり、とても印象に残りました。ニカラグア内戦から、イランコントラ事件、コロンビアのパブロ・エスコバール達の麻薬戦争、左翼ゲリラの戦争、大統領候補ガランの暗殺、エルサルバドルの内戦、大司教ロメロの暗殺、メキシコの疑惑の88年大統領選挙、続く94年選挙での大統領候補ルイス・コロシオの白昼の暗殺劇、NAFTA発効、サパティスタの蜂起、、、すべて本当に起こったことで身近で報道に接していたことが、麻薬カルテルや犯罪組織を通じてひとつの壁画のように連なって語られています。

 対立する二人の主人公、アート・ケラーとアダン・バレーラが、実は似通った人間性を持っていて、コインの裏と表(メキシコ風に言うと鷲と太陽)のように思えるところは、手塚治虫さんの「アドルフに告ぐ」やベルナルド・ベルトリッチの「1900年」を思い出しました。

 複数の物語が違う場所で同時に展開するところは、ちょっと、今年、今更ながらノーベル文学賞を受賞したペルーの作家、バルガス・リョサの長編「緑の家」を思い出したり、、、(ちょっと強引か?)

 虚無感の中に一筋の希望の光が見えるラストの余韻に、しばらくは浸れそうです。

 

 

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