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2007年3月 1日 (木)

メキシコ料理の魔法

 先日、来店されたあるアメリカ人のお客さんと話していた時のこと。彼はサルシータの料理を大変気に入ってくれたようで、こう言われました。"Your food is magical."

アメリカ人は大袈裟だからなあ、とその時は内心そう思ったのですが、改めて考えてみると、店で料理を作って味見をした時に魔法にかかったような感覚を覚えることが、確かにあるのです。例えば、店で余って硬くなってしまった牛肉の煮込みの肉をやはり余りのサラダ用の野菜とメキシコの唐辛子のドレッシングで和えて口にして、その予想を裏切る美味しさにびっくりした時、或いは鶏肉と野菜の旨みいっぱいのスープにライムを搾りいれて、最後にほんの一つまみのオレガノの香りを纏わせた時、そして、鶏肉をメキシコの唐辛子とナッツと果物、それにチョコレートを加えた複雑な味のソース「モレ」で煮込んで、最後のひと塩で全ての材料の味と香りが渾然一体となって立ち上がって来た時に。

 ぼくは、ちゃんと料理の修業をしたわけではないし、料理人としてさして才能があるわけではありません。そんなぼくの料理でも魔法のように感じて頂けたとしたら、メキシコ料理自体に、そんな魔術的なところがあるからではないしょうか。

 かつて、作家のガルシア・マルケスが、自分の小説が魔術的と評されていることに対して、「自分の小説に出て来る不思議に見える現象、例えば、屋根に座っていた子供が、ハリケーンに空高く舞い上げられることなんか、実はリアルな話で、カリブの世界では珍しくないことなんだ。」みたいなことを言って反論していましたが、ぼくも似た心境になりました。「メキシコ料理の世界ではこんな不思議なような美味しさは当たり前のことなんですよ。」

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コメント

シェフ、ご無沙汰しております。

”モレ”、あのSALSITAの魅惑的なモレソースには中毒性があります。(笑
私を虜にしたその”magical”な味の裏には、そんな魅惑的な”調合”秘話があったのですね。

昔観た映画の中で、料理人の感情や気持ちが料理を介して食べる側の人を感化させてしまうという印象深いシーンがあったのを思い出しました。

SALSITAのお料理を食べると、まさに”魔法”にかかったように良い気分になるのは、シェフの”魔力”によるところでしょうか。

投稿: 柿のk | 2007年3月 1日 (木) 10時22分

それって、なんという映画ですか?
確か、メキシコ映画の"Como agua para chocolate"(日本語タイトルは「赤い薔薇ソースの伝説」)がそんな内容だったような、、、

投稿: MORIYAMA | 2007年3月 2日 (金) 02時45分

そうです!
中学生か高校生の時に観て、タイトルは忘れてしまっていましたけれども、あの印象的な食事のシーンだけはずっと覚えていました。
料理や食事のシーンは、どの映画の中でもとりわけ注意を払って観る部分なのですが、「赤い薔薇の・・・」のあのシーンも、”あんな風に食べてみたいなぁ。”とか”どんな味がするんだろう。”など、想像力をかき立てられました。
食い意地が張っているのかな。(笑
表現も詩的で、感受性の豊かだったあの頃だった故に、強烈
な印象として私の中に残ったのかもしれません。
タイトルが思い出せて、すっきりしました。
ありがとうございます。

投稿: 柿のk | 2007年3月 2日 (金) 10時48分

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