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2007年3月 3日 (土)

PENETRAR

 今日は桃の節句ということで、女性を讃える話にしたいと思います。

 あれは今から13年前のこと、スペインを旅していた僕は、更にその2年前にチリの標高2500メートルの砂漠の中の小さな村、サン ペドロ デ アタカマで知り合ったスペイン人の女性を、彼女の故郷であるカタルーニャ地方の小さな町に訪ねていました。住民は、皆、知り合い、というくらいの小さな町でしたが、彼女のボーイフレンドや他の友達と、カフェや食堂、クラブなどを巡って楽しく過ごさせてもらいました。彼等同士の話は全てカタルーニャ語なので、僕には理解できなかったのですが、僕と話す時だけはカスティヤーノ語(いわゆるスペイン語ですね。)に切り替えてくれていました。

 そして、次の日の朝、彼女の実家の大きな家に泊めてもらっったのですが、なかなか他の人が起きて来ない。やることがなくてリビングをうろうろしていたら、マガジンラックにスペイン語版の雑誌「コスモポリタン」があったのでひまつぶしに読み始めたのです。すると、その中にメキシコ人の作家ラウラ・エスキバルのインタビュー記事がありました。彼女の"COMO AGUA PARA CHOCOLATE"(日本語タイトルは「赤い薔薇ソースの伝説」)という小説は夫でもあった映画監督アルフォンソ・アラウによって映画化され、その前の年にニューヨークで外国語映画としては新記録の一年以上のロングランとなる大ヒットになっていました。(ちなみにそれまでの記録はスペインのペドロ・アルモドバル監督の「神経衰弱ぎりぎりの女達」でした。)また、原作の小説もニューヨークタイムスのベストセラートップ10に一年近く入るほど売れていました。

 さて、この小説(映画)は19世紀末の、まだ封建的な空気が残るメキシコ北部の村が舞台です。末の娘は結婚しないで親の面倒を見ないといけない、という古い風習のために愛する男と結婚出来なかった娘とその恋人。男は、その娘の傍に居たいという一心で、なんと彼女の姉と結婚して彼女の家にやって来ます。愛し合っているのに、他の家族の手前、それを隠し通さないといけない二人。娘は子供の頃から料理番の老女に仕込まれた得意の素晴らしい料理で、愛する男に思いを告げ、魅了するという話でした。

 スペイン語の"PENETRAR"という単語は「浸透する」とか「侵入する」という意味で、スラング的に、男性の側からの視線での性行為を指すことがありますが、その動詞を使って、そのインタビューの中でラウラさんはあの小説に込めたメッセージを説明していました。「男性は肉体的に(時には力ずくで)女性を"PENETRAR"することが出来るが、女性は料理を通して男性を"PENETRAR"することが出来る。」

 思えば、アメリカ合衆国は、戦争に勝ってメキシコからテキサスやカリフォルニアなど六つの州を奪いましたが、それらの州では、未だにメキシコの料理のほうがアングロアメリカ的な料理よりも人気があるのではないでしょうか?つまりアメリカはメキシコを力ずくで"PENETRAR"したけれども、食文化という点ではメキシコのほうがアメリカを"PENETRAR"しているということですね。もっと言えば、旧大陸からやって来てアステカの都を"PENETRAR"したスペインの男達が、アステカの女達に"PENETRAR"されたから、とうもろこしや豆、唐辛子、トマトなどアメリカ土着の食材をを主原料とする今日のメキシコ料理があるのです。

 そう考えてみると、先日、サルシータの料理をマジカルと表現した、あのカリフォルニア出身の白人男性、現代の国際ビジネスシーンでばりばり活躍していそうなあの彼も、実は遠い昔のアステカの女性達に"PENETRAR"されていたんですね。

 

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