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2007年1月 4日 (木)

ヨ・テ・キエロ

 このブログで初めに取り上げた「悲劇週間」を読んで以来、詩人の堀口大學に興味を持って、彼に関する本を読んだりしているのですが、彼の父である堀口九蔓一にも、とても魅力を感じています。戊辰戦争で父を亡くした九蔓一は、教育熱心な母に育てられ、猛勉強して日本でも最初の外交官の一人となり、韓国、メキシコ、ブラジル、スペインなどへ、大使として着任しているのですが、とりわけ、スペインがお気に入りだったようで、スペイン語に関するこんな記述を残しています。先日、読み終わった、工藤美代子著「黄昏の詩人 堀口大學とその父のこと」という本からの孫引きですが、紹介します。

 例へば、英語の「アイ・ラブ・ユー」は明快で、どことなく事務的で几帳面な感じがする。これはどうしてもアングロ・サクソンのやうな實利主義的な痩せた人種の愛の表現法である。

 ドイツ語の「イッヒ・リーベ・ヂッヒ」は何か知ら厚ぼったい感じがして、丁度豚の腸詰でも頬張っている人の戀の表現法である。

 フランス語の「ジュ・テーム」は輕快に手っ取り早く自分の考へを云ひ表はすには適當な表現法ではあるが、しかし何となく輕はずみで、無造作で、有難味が少ないやうな感じがする。

 ところが、西班牙語で、「アイ・ラブ・ユー」に當る「ヨ・テ・キエロ」は、嗚呼何んと熱烈な表現法であることよ。直譯すれば「私はお前が欲しい」と云ふのである。なんとまあ、張りがあって眞劍味で、そして如何にも熱烈であるではないか?

 いかにも、明治時代の知識人といった、ちょっと硬い文章ですが、さすが、詩人の父(本人も漢詩を書いていましたが)らしい感性の豊かさを感じます。工藤美代子さんは、九蔓一にベタ惚れのようで、「明治時代の日本に、こんな国際化されたスマートな男性がいたのかと、まずは驚かされた。それと同時に、九蔓一は日本男児の持つ全ての美点を備えており、かつて日本の男はこれほどまでに自信に満ちあふれ、情を解したのだと私に教えてくれた。」と書いています。現代の日本男児には、ちと耳が痛い発言ですね。

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