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2006年9月 4日 (月)

昨日の旅

 先日、帰省した際に実家の本棚を見ていたら、昔読んだ清水幾太郎の「昨日の旅」という文庫本を見つけました。この本は「ラテンアメリカからスペインへ」という副題が付いていて、清水さんがメキシコやブラジルなどラテンアメリカの国を旅した後に旧宗主国であるスペインに渡った旅の紀行文です。ラテンアメリカの国々の独立の英雄達や、フランスの社会学者オーギュスト・コント、イエスズ会創始者のイグナシオ・ロヨラの足跡を辿って、スペインでは独裁者フランコの死と新国王カルロス一世の即位に遭遇するというもので、歴史に関する深い認識を持つ著者ならではの洞察が興味深い本です。

 ぼくが、今から14年前にスペインからラテンアメリカへと渡る10ヶ月にも及ぶ旅に出たのもこの本の影響が少なからずあったので、懐かしく読み返しました。ところで、この本を最初に読んだ時は知らなかったのですが、清水さんという人は所謂左翼の「進歩的文化人」として、1960年の安保反対運動の指導者として活躍したが、敗北、その後は、防衛力の増強を唱えるなど、右に急旋回して「転向者」と随分批判された方のようです。

 こういう右翼と左翼の対立といった構図はラテンアメリカの文化を語るときによく出てくる話です。たいがい、「右」の独裁者がいて、それの批判勢力として、文学や音楽の世界では「左」の思想を持つ人が多い。まあ、キューバなんかは逆ですが。

 でも、ぼくは思うのですが、例えば一つの高い山の頂に登るのにいろいろなルートがあるように、右の人も左の人も目指しているところは同じで、たまたま選んだ道が違うだけなのではないでしょうか。だから、どっちの人の言うことにも同意する部分がそれぞれあるんです。でも、多くの人はどっちかに属してしまうと、とにかく相手の言うことは全否定というふうに凝り固まってしまうのです。

 ぼく自身は、被爆地である広島の出身で、周りに左翼的な考えの大人が多かったので、若い頃はそっちの考えが強かったのですが、あちこち他の国々を廻っているうちに、だんだん民族的な考え(これって右翼?)も身に付いて来ました。でも自分が変わったとは思っていません。だから、清水さんという方も、まあ、ぼくなんかと比べるのは僭越ですが、他人の眼はどうあれ、自身の中では「転向」したという認識は無かったのではないかと思うのです。

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